空中権って何?

今回は空中権移転って、そもそもどのようなことなのかおさらいしてみます。

我が国の空中権移転は建築基準法の改正で制定された「連担建築物設計制度」を利用して、隣地の余剰容積を移転して利用できる制度なのです。

土地所有者が土地を利用する権利は、土地の地下から上部空間にも及びます。特に「土地の上の空間だけを利用する権利」を空中権といいますが、法律的には正式の名称とされていません。

これまでも上部空間を利用するケースとしては、送電線や建物と建物をつなぐ渡り廊下、人工地盤上の建物などがあります。

ある土地の上部空間の利用権を他の土地で実現することを空中権の移転といいます。この場合の権利は容積率ですが、権利の移転のため当然対価が伴い容積率は売買されます。権利の保全には通常、地役権が双方に設定され、役所の台帳にその旨が公告され一般に告知されます。

建築基準法では、敷地面積に対して、何倍までの面積が使用できるかという、許容限度を50%~1300%の間で指定容積率として定めており、無限に建物の階数を増やすことはできません。

さらに、容積率が指定されていても前面道路が12m未満の場合は、道路幅による容積率制限があり、住居系地域では前面道路幅×0.4 、それ以外の地域では 0.6をかけて、指定容積率とこの計算結果のうち、低い方の値を許容容積率として採用することになっています。そのため図1のようにA地では指定容積率が400% だとしても前面道路が 4mであるため、240%(4m×0.6)しか容積を使用することはできません。

Aの土地は240%、Bの土地は400%まで容積を使えるため、Aの土地では240坪、Bの土地では400坪の規模の建物が建築可能なのです.

空中権1

しかし、A、Bの土地を一体と考えれば、12mの道が前面道路となり200坪の土地に対して400%の容積を使えるため、800坪 (200坪×400%)までの建物を建てることができます。

敷地をAとBを一緒にして、全体として容積いっぱいの建物を別々に建てるとすれば、図2のように、Aの土地の建物の余剰容積をBの土地の建物で利用することが可能になります。

このようにAの余剰容積をBに移転することが空中権の移転の仕組みです。

空中権2

この考え方からすればあらゆる敷地で容積率移転が可能な気がしますが、建築基準法では一つの敷地には一つの建物しか建てられないことになっているためこうした計画は認められません。

例外として一団地認定制度といって計画的に大きな団地を造る場合は認められていますが、既存の建物の容積が余っているからといって、隣地に余剰容積を移転することはできませんでした。「連担建築物設計制度」ができてで初めて、隣接敷地であればひとつの敷地とみなして、容積率の規制を適用することができるようになりました。

容積率の移転は当初は隣地だけであったのが、同じ街区ならOKになり、次には地区計画により街区を飛び越えてもOK、そして現在では歴史的建造物の場合ならそれを保全するために離れていてもOKになりました。今回の高速道路の上空に敷地を造り、その容積率を移転するのは、公共建造物保全と公園などの都市インフラを充実させるために寄与する場合はOKという特例を設けるのでしょうが、この制度を民間で利益享受のために活用することは難しいでしょう。しかし、これらの考え方は、アメリカで活用されているTDR(Transterable Development Rights)と考え方は同じなのです。次回はアメリ