建築基準法 その2(耐震基準)

地震が頻発しているので、日本のどこにいても大地震に見舞われるのではという不安に駆られているのではないでしょうか。

不安をあおるわけではないですが、大地震に対して建物は安全なのか、そうでないのかを建築基準法を基に少し考えてみたいと思います。

 

そもそも建築基準法を遵守していれば建物は安心だというイメージが国民に浸透していますが、建築基準法の第1条の(目的)には「この法律は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もって公共の福祉の増進に資することを目的とする。」と記載されています。

すなわち、建築基準法をクリアしている事は最低基準を満たしているに過ぎないということを認識する必要があります。法律により個人が自由に建築することを制限するわけですから、必要最低限であることは当然かもしれません。ただし、最低限を守れば条文に書かれている「生命、健康及び財産が保護」されるかといえば、保証しているわけではなく、一定基準を示しているに過ぎません。建築基準法より上の性能を求めたければ各自どうぞという事です。

我が家は、有名な○○というハウスメーカが建てたから大丈夫だ。大手の建設会社が建てたマンションだから大丈夫だ、高級材料を使用して建設費が高かったから大丈夫だという認識をしている方も少なくありませんが、基本的には法律で定められた最低の耐震基準なのです。しかし、かなりの多くの建物がその最低基準でさえ守られずに施工されていることを思えば、上記の住宅にお住まいの方は少しは安心と思ってよいかもしれません。

現在のような地震が頻発するときに気になるのはお住まいの耐震基準だと思いますが、建築基準法で定めた耐震基準は、あくまでもその建物を建設するときに決められた耐震基準です。

耐震基準は建築基準法が昭和25年に制定されて依頼、大地震が起きる毎に基準は改正されています

建築・不動産業界でよく知られる1981年の新耐震基準以降なら耐震的に大丈夫ということになっていますが、1981年時点での最低基準は満足しているということは事実ですが、現実には1995年の阪神大震災で耐震基準は変わっていますので、新耐震基準だからといって安心とはいえないのです

1995年以前の建物は正確に言えば既存不適格建築なのです。違反建築とは違いますが、現在の法律に適合していない建物のことを既存不適格建物というのです。さらに、確認申請が認可されているのだから安心かといえば、姉歯事件での構造計算偽装や施工ミスの未確認などが発覚して改正された2006年以降とそれ以前とは、全ての建築物という土俵で見た場合、建物の質は違っているといえるのです。

法律ですから最低の基準というラインを引くのは当然ですが、耐震基準の最低とは何かということを知っている人は、建築関係者以外は少ないのではないでしょうか。

新耐震基準の定義は次のようになっています。

《中地震(震度5程度:数十年に一度は遭遇)に対してはほとんど損傷しない》《大地震(震度6強~7程度:数百年に一度は遭遇)に対して建物が倒壊・崩壊しない》という基準なのです。

すなわち大地震に見舞われたときに新耐震基準の建物は、倒壊はしない基準ですから人命は助かりますが、損傷は免れないかもしれないのです。損傷が大きければ改修が不可能なケースも少なくありません。

2001年には、「住宅品質確保の促進等に関する法律(品確法)」が施行され住宅性能表示制度が発足して地震に対する性能ランクが3段階示されています。性能ランク2では、大地震で想定される地震力の1.25倍、ランク3では1.5倍の地震でも倒壊・崩壊しないという性能を備えた建物です

建物の価値は構造だけではありません。外壁やサッシ・ガラスなどの二次部材のほうが多いかもしれません。二次部材に関しては、法律で定められてはいませんが、指針が定められており、それに基づいて施工されます。しかし、小さな看板や設備機器の取り付けなどについては、そのような指針がないため大地震時には、人的被害が少なくないため、建物に近い屋外の方が、建物(それほど古くない建物なら)の中より危険ともいえるのです。