建築基準法 その3

建築基準法の内容は大きく分けて、統括的規定・手続規定と集団規定・単体規定に分けられています。そのほとんどは集団規定・単体規定です。

集団規定というのは、地域環境としての制限で、建物用途の制限に始まり建ぺい率・容積率といった建物規模の制限や斜線制限などの形態制限などが当てはまります。将来、一部が都市計画法に組み入れた方が分かり易いという議論もされています。

 

単体規定というのは、建物の構造や防火・避難・排煙など建物そのもの安全性や換気・照明・遮音など健康性・快適性を維持機能し続けるために必要な最低基準を定めた規定です。こちらは、建築基本法として大改定を目指して検討されています。

要するに集団規定というのは市街化された地域の環境を乱さないように、建築に関る近隣住民の紛争や苦情が発生しにくいように規制しているのです。

最低基準を決め詳細はそれぞれ地区計画で決められるようにはなっていますが、そうとは思えないくらい詳細に規定されています。

単体規定は、安全面・健康面での基準を設けて、最低限これを守らないと安全・健康面に問題が生じるかもしれませんという規定です。しかし、建築基準法を遵守すれば建物の安全が保証され私達の生命・健康・財産が完全に保証されるわけではない(最低基準であり、また保証されるという記載もありません)のにもかかわれず、保証されていると国民に思われている感はぬぐわれません。

 

このように考えると建築基準法は優れた法律だと思われるかもしれませんが、法律の専門家の間では建築基準法ほど難解な法律はないとも言われていますが、近年は改定が頻繁に行われ我々実務設計者にとってはそのつど難題が課されることになります。

たとえば、斜線制限を緩和する天空率といった改正法では、これまで道路の幅や隣地からの離れに従い斜線制限という高さの規制がありました。狭い道路を見上げれば屋根が斜めにセットバックしているのを見かけると思いますが、あれです。

しかし、最近ではセットバックした建物を見かけるのが少なくなったと思いませんか。それは「天空率」という手法を使用することにより斜線制限がなくなるのです。簡単に言えば、これまでの斜線制限を守った適正な建物と同じ程度に道路が明るければ(同じくらいの天空の量が見えれば)建物を高くしてもよいという法律ができたのです。具体的には、道路に面して敷地の脇を広く空けることにより建物は高く建築できることになります。

しかし、これにより町並みのスカイラインは凸凹になってしまいます。多くの諸外国ではむしろ高さを一定基準で制限するのが一般的です。街並みの統一性という観点からは「天空率」は悪法ともいえます。

 

建築基準法で新たに取り込まれたシックハウス法や省エネ法も一見よさそうですが、よく考えれば両者は相反する法律ともいえます。シックハウス法では、すべての居室に24時間換気が義務づけられます。外気を取り入れて1時間で部屋の空気を半分入れ替えなさいということですが、寒い冬に外気を入れると省エネにはなりません。

省エネにするには熱交換が行える換気扇を使用すればよいのですが、熱交換率は高くなく価格も高いためあまり使用されていません。

シックハウスになるような建材は現在ではほとんど見かけません。それでも、家具には規制がないため化学物質が出るかもしれないので換気しなくてはならないという法律です。

これでは、最低基準とはいえなく健康な人にとっては余計なお世話かもしれません。

 

省エネ法も不要とは言い難いですが、西欧の寒い国を手本とした厳しい基準を、どちらかというと温帯(今後は熱帯になるという説もある)の日本全土に導入するのは、いかがなものでしょうか。

 

バリアフリー法も高齢者に優しいのはよいのですが、そもそも米国でベトナム負傷兵の社会復帰を目指して(働かせて社会保障費がかさまないために)できた法律です。

日本では高齢者(もちろん障害者も含みますが)が動きやすい(高齢者にとっては働きやすいためではありません)ようにしなさいということで社会保障はかさむ一方です。そもそも全てのバリアフリーが老人の健康によいのか疑問です。

 

現在、国の財政難を解決するために、道路の上の空中権を売却できるようにしようという法律も検討されています。次回にお話しましょう。